コラム

高齢社会における木村病院の役割

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地域包括ケアをすすめる上で何をなすべきか

地域包括ケアシステムとは?

 地域包括ケアシステムとは、「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制(医療介護総合確保促進法第2条)」とされます。福岡・糸島医療圏の高齢化率は20.9%(2016年4月)と福岡県や全国のそれより低いものの、65歳以上の独居率は28.3%と全国の17.3%よりも遙かに高く、今後急速に独居の高齢者が増えると予想されます。

福岡市の人口推移・推計グラフ

福岡市博多区の医療体制はどうなっている?

 福岡市では2017年度より、在宅医療推進のためブロック支援病院を中心とした医療体制作りを推進しています。博多区医師会は、在宅医療の基盤づくりのため、博多区を博多区北部のAブロック、南部Bブロック、東部Cブロックの3ブロックに分け、それぞれ木村病院、さく病院、永野病院をブロック支援病院に選定しました。ブロック支援病院には、在宅医療の基盤となる病院間・病院と診療所間・診療所間の連携体制づくりを支援(サポート)することを求められています。

 

 福岡市博多区を支えるさまざまな社会資源

当院は私設の救急病院として、長年地域の救急医療を支えてきました。福岡市博多区は、福岡市民病院、千鳥橋病院、原三信病院の3つの総合病院の他、当院を含めて14の中小病院、多数の診療所、歯科診療所、調剤薬局、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、福岡市地域包括支援センター(いきいきセンターふくおか)、介護施設、などの地域医療介護をささえる多くの社会資源に恵まれてはいます。しかし、それらのセーフティーネットを十分に利用できていない人々もいらっしゃいます。

福岡市の地域包括ケアシステムイメージ図

独居高齢者が必要な公的サービスを受けていないという現実

 ここ数年、当院へ救急搬送される高齢者に多い疾患は、誤嚥性肺炎・慢性心不全増悪・脳梗塞・骨折などです。すでに介護保険による何らかの支援を受けられている患者さんも多い一方、重篤な状況で救急搬送されてきた独居の高齢者が、病院への緊急入院をきっかけに、初めて公的サービスにつながる事例も見られます。

 どこの病院にも医療連携や患者支援に関わる部門が置かれています。当院では「地域医療連携室」がそれにあたります。その仕事も、前方支援・退院調整業務から、患者支援・退院支援・多職種連携業務へと変化してきています。地域の医療・介護資源の情報も集積し、多職種のネットワークも構築されています。

共に学び、地域を支え合う

 患者中心の医療を行うには、生活者としての患者を取り巻く家族や地域社会などのバックグラウンドを理解する必要があります。保健所や医師会が行う多職種研修会への参加はもちろん、当院の主催で定期的にブロック会議を開催し、地域の病院・診療所・訪問看護ステーションなどの施設で働くいろいろな職種の人たちと共に学び、意見交換を行い、顔の見える連携を築いています。こういった活動が地域でのチーム医療をすすめ、高齢者の日常生活をサポートすることになると考えています。木村病院は、この地域のブロック支援病院として地域の様々な社会資源を活用しながら、医療や介護を必要とされる方々を支えていきます。気軽に当院の患者相談窓口・地域医療連携室をご利用ください。

 

安心して暮らすための相談窓口

また、各地域の「いきいきセンターふくおか」は、高齢者のみなさんが住み慣れた地域で、安心して暮らし続けることができるように、健康や福祉、介護などに関する相談を受け付けます。お住まいの地域(小学校区)で、対応する担当センターが異なります。たとえば千代小学校区と博多小学校区は博多第1センター、など、博多区内に8ヶ所のセンターがあります。福岡市のホームページでセンターの場所を確認できます。または、博多区保健福祉センター(地域保健福祉課)電話:092-419-1099 までお問い合わせください。

           宮﨑 亮(みやざきりょう)

木村病院 副院長・地域医療連携室長

博多区医師会理事(地域包括ケア・介護保険担当)