コラム

「ロコモ」を知っていますか?

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「ロコモ」って何?

皆さんは「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群:通称「ロコモ」)という病態をご存知でしょうか?

実は整形外科専門医の私も知らなかった最近言われるようになった病態です。

要は歯の予防医学と一緒で「骨や関節筋肉などの低下は健康寿命に大いに影響する」ということです。

どんな人がなりやすいの?

なにも高齢者に限った病態ではありません。社会人になるとなかなか運動する時間が取れず、徐々に体重は増え続け筋肉量は減っていくばかりです。特に学生時代にでさえ運動されていなかった方は、中年以降驚くほど筋肉量が減っていきます。

いやいや自分は大丈夫だといわれる方は、下記の2つのテストをやってみられるとよろしいでしょう。

ロコモ度テストを実践してみよう。

➀立ち上がりテスト
このテストでは下肢筋力を測ります。片脚または両脚で、決まった高さから立ち上がれるかどうかで、程度を判定します。

立ち上がりテストの方法
台は40㎝、30㎝、20㎝、10㎝の4種類の高さがあり、両脚または片脚で行います。

⑴10・20・30・40㎝の台を用意します。まず40㎝の台に両腕を組んで腰かけます。このとき両脚は肩幅くらいに広げ、床に対して脛(すね)がおよそ70度(40㎝の台の場合)になるようにして、反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間保持します。

⑵40㎝の台から両脚で立ち上がれたら、片脚でテストをします。①の姿勢に戻り、左右どちらかの脚を上げます。このとき上げたほうの脚の膝は軽く曲げます。反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒間保持してください。

結果の判定方法

<片脚40㎝ができた場合⇒低い台での片脚でテストを行う>
10㎝ずつ低い台に移り、片脚ずつテストします。左右とも片脚で立ち上がれた一番低い台がテスト結果です。
<片脚40㎝ができなかった場合⇒両脚でテストを行う>
10㎝ずつ低い台に移り両脚での立ち上がりテストします。
両脚で立ち上がれた一番低い台がテスト結果です。
【参考:各高さでの難易度比較】
両脚40㎝<両脚30㎝<両脚20㎝<両脚10㎝<片脚40㎝<片脚30㎝<片脚20㎝<片脚10㎝

注意すること

・無理をしないよう、気をつけましょう。
・テスト中、膝に痛みが起きそうな場合は中止してください。
・反動をつけると、後方に転倒する恐れがあります。

 

②2ステップテスト
このテストでは歩幅を測定しますが、同時に下肢の筋力・バランス能力・柔軟性などを含めた歩行能力が総合的に評価できます。

2ステップテストの方法

⑴スタートラインを決め、両足のつま先を合わせます。
⑵できる限り大股で2歩歩き、両足を揃えます。(バランスを崩した場合は失敗とします。)
⑶2歩分の歩幅(最初に立ったラインから、着地点のつま先まで)を測ります。
⑷2回行って、良かったほうの記録を採用します。
⑸次の計算式で2ステップ値を算出します。

2ステップ値の算出方法
2歩幅(㎝)÷身長(㎝)=2ステップ値

注意すること

・介護者のもとで行いましょう。
・滑りにくい床で行いましょう。
・準備運動をしてから行いましょう。
・バランスを崩さない範囲で行いましょう。
・ジャンプしてはいけません。

運動習慣をつけましょう!

上のテストで該当しなかった方も、ロコモにならないよう予防したほうが絶対に良いことはお分かりだと思います。そのためには徐々に運動習慣をつけることが第一です。いろんな持病を抱えておられる方もいらっしゃると思いますので、自分に合った運動を見つけて、とにかく続けることです。

自分だけの問題と思っていませんか?

時々びっくりするほどの運動能力を持続している高齢者と出会うこともありますが、やはりかなり努力をされているのだと思います。運動能力の低下は自分だけの問題でなく、どれだけ家族に負担をかけるのかを想像すると、少しやる気が出るのかも知れません。

タンパク質とカルシウムを摂ろう!

適度な運動だけでなく食事も大事です。いろんな栄養素をバランスよく食べることに気を配り、特にたんぱく質とカルシウムを積極的に摂るようにしましょう。

元気に生きることは案外難しいことです。今できることからやってみましょう。

 

参考資料:日本整形外科学会「マダニャイのニャるほど!ロコモ講座」

 

木村病院 整形外科  岩永 貴行

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