コラム

福岡市に住む方におススメ!~胃がん予防のための2つの検診~

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胃がんを予防しよう!

 突然ですが、私たち日本人の死因をご存じでしょうか?

 平成28年度の統計によると、日本人の死因の第一位は悪性新生物(がん)、第二位は心疾患、第三位は肺炎と言われています。

 死因第一位の悪性新生物(がん)をさらに部位別に見ると、男性、女性ともに第3位以内に入っているのは、「胃がん」です。WHO(世界保健機構)によると、全世界の胃がんの8割がピロリ菌の感染が原因であるとされ、このピロリ菌を除菌することにより、胃がんの発症を3~4割減らせるという報告もあります。   

 また、ピロリ菌と関連のある疾患は、他に、胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃過形成性ポリープなどが挙げられますが、胃がんは発見が遅れると、体への負担や経済的負担、休業など、患者さんにかかる負担は決して小さくはありません。そのため、将来胃がんにかかる危険性があるか調べたり、胃がんにかかっていないかどうかをがん検診などで定期的に調べることが重要となってきます。

 今回は福岡市が行っている「胃がんリスク検診」と「胃がん検診」の2つの検診についてご紹介します。

「胃」は体 の中で何 をしているの?

 私たちの胃は「胃袋」といわれるように、口から食道を通って入ってきた食べ物を蓄えられるような袋状の形をしています。食べ物が胃の中に入っていない時は、細長くしぼんでいますが、食べ物が入ると袋が膨らむ仕組みです。この胃袋には、個人差はありますが食べ物や飲み物を1.5~2.5L程蓄えることができるといわれています。そして胃袋の中で胃酸という強い酸を出し、貯まった食べ物をお粥状になるまでドロドロに溶かしたり、殺菌した後、十二指腸へ食べ物を少しずつ送り届ける役割を果たしています。

胃がんの発生原因と症状とは?

 胃がんの発生のメカニズムについてはまだわからないこともありますが、先述の通り、多くは「ヘリコバクター・ピロリ菌」の感染により引き起こされると考えられています。その他、食習慣や食生活、飲酒や喫煙、血縁者の中に胃がんにかかった人がいることも、胃がん発生の危険因子と言われています。

 

 

 

 

 また、胃がんの症状については、無症状のこともありますが、主に、体重減少、腹部不快感や胃痛(心窩部痛)、食欲不振、吐き気や嘔吐、黒色便などの症状が見られます。しかし、胃潰瘍や十二指腸潰瘍でも似たような症状が見られますし、無症状のことも多いので注意が必要です。

なぜ“ピロリ菌”が胃の中に?

 ピロリ菌は、子供の頃、多くは5歳頃までに井戸水などの生活用水を飲むことにより感染するとされてきました。しかし、上水道が整っている現在では、食べ物を母親が子供に口移しすることによる「母子感染」などが主であると考えられています。大人は乳幼児に比べ「胃酸」が多く、大人同士で飲み物を回し飲みしてもほとんど感染しないといわれています。この「胃酸」には強い酸で食物を溶かし、胃の中に侵入した菌を殺菌する働きがあります。しかし、ピロリ菌自身は、アンモニアの膜に覆われているおかげで、胃酸を中和することできるため、酸が強い胃の中でも生息することができます。

福岡市の「胃がんリスク検診」とは?

 福岡市では、2018年7月より「胃がんリスク検診」といわれる血液検査だけで将来胃がんになるリスクを調べる検診を始めました。この検査では「抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗体」と「ペプシノゲン法」の2つの項目を同時に調べます。それぞれピロリ菌感染の有無と、胃の萎縮の状況がわかります。萎縮とは、胃粘膜が老化している、つまり長期間にわたり胃の粘膜が傷つき、再生を繰り返している状態のことです。胃が萎縮しているほど、胃がんにかかるリスクが高いと言われています。この2つの検査結果を組み合わせて、胃がんにかかるリスクをA~Eの5段階で評価します。

A群(抗ヘリコバクターピロリ菌-、ペプシノゲン法-)⇒ おおむね健康的な胃粘膜

B群(抗ヘリコバクターピロリ菌+、ペプシノゲン法-)⇒ 少し弱った胃粘膜

C群(抗ヘリコバクターピロリ菌+、ペプシノゲン法+)⇒ 萎縮の進んだ弱った胃粘膜

D群(抗ヘリコバクターピロリ菌-、ペプシノゲン法+)⇒ 萎縮が非常に進んだ胃粘膜

E群 ピロリ菌の除菌の治療を受けた方

 B群、C群、D群と判定された場合、胃カメラを受けて実際に胃粘膜が萎縮しているかどうか、また胃がんの発生がないかを確認することが望まれます。その上で、B群、C群の方はピロリ菌を除菌するための内服治療を行います。(これらの検査・治療については保険適応になります。)

 福岡市が行う胃がんリスク検査は、福岡市に住んでいる35歳及び40歳の方が対象で、検査は35歳か40歳の1回のみ可能です。負担金は1000円で、結果は1ヶ月後にわかります。

 また、過去にピロリ菌の検査を受けたことがある方は対象外となります。ただし、過去にピロリ菌の除菌をしたことがあり、不成功だった方は対象となります。

福岡市の「胃がん検診」とは?

 職場の健康診断や市町村が行っている検診で定期的に胃の検査を受けることが大切です。ここでは福岡市が行っている「胃がん検診」をご紹介します。この胃がん検診は福岡市に在住の方で職場等で胃の検査を受ける機会の無い方が対象です。胃カメラと胃透視では対象年齢が異なり、胃カメラの場合は、50歳以上の偶数年齢の方(例:50、52、54..歳)、胃透視の場合は40歳以上の方となります。 

 料金はどちらも福岡市の補助により1,800円(胃透視は集団検診の場合600円)で受けられます。個人で自費検診で胃カメラを受けた場合は約15,000円、保険診療の場合は約5,000円程かかりますので、とてもお得な検診ですね。

 

 福岡市の「胃がんリスク検診」と「胃がん検診」で胃がん予防を!

 福岡市にお住まいの方でしたら、まずは35歳または40歳で「胃がんリスク検査」を受け、ご自身が将来胃がんにかかるリスクがどの程度あるのかを調べた上で、40歳以降は福岡市の「胃がん検診」の胃透視を、50歳以降は胃透視と胃カメラを交互に受けていくというのも一つの方法です。 

 胃がんの早期発見・早期治療のためには、リスクを把握した上で、毎年または2年に1回でも胃の検査を受けることをお勧めします。特に今回ご紹介した福岡市の「胃がん検診」や2018年から始まった「胃がんリスク検診」は、福岡市に住んでいる方にはお得な検診です。この機会に受けてみてはいかがでしょうか?

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社会医療法人社団至誠会 木村病院 消化器内視鏡センター